水がれ


 石田野の加助は、今日も朝からがんばっていた。というのは、水が田にないからだ。
「何とかして水を手に入れたいものだ。」
雨は、約十五日間降らず、用水には水もなく困っていた。
「なんとか雨が降らないものか。」
と、つぶやいていた。
 そこへ、茂吉がやって来て
「加助。」
「なんだべか。」
「この前からみんなで分けて使っていた用水の水も、からからになってしまったなあ。」
と困ったように言った。する加助が
「なんでも、中山や本野の田んぼもひびわれてきたそうな。こりゃ今年も、いねはかれてしまう。」
 じつは十日ほど前までは、用水の水を村の村長さんが、公平に分けて使うように言ったのだ。みんなで相談しているうちに、吉平が
「来年のために水をためる物を作ろう。」
と言いました。
「どこに。」
と茂吉がたずねました。
「どこか、広い所がないべか。」
と、いろいろ話し合っているうちに、お宮の前にため池を作ることになりました。
 次の日から、石田野の男たちは、スコップとかつるはしとか、とんがなどを持って朝早くから日がくれるまで工事をしていました。
 水がしみるので、赤土をきねでたたいて止めました。
「えんやこら、えんやこら。」
「これさえできれば、来年は豊作だ。」
「がんばれ、がんばれ。」
 年がたち、ため池作りは、計画通り進みました。が、それでも大きな石や土を掘るのは大変です。
「計画通り進んでいるから、がんばれよ。」
と、みんなは、はげまし合って、がんばりました。
 冬の寒い日も暑い夏の日も、朝から晩までみんな力を合わせてがんばりました。
 そして待ちに待った一年がたちました。
「みんなががんばったおかげで、こんなに早く終わったなあ。」
「これからは、もう水不足で困ることもない。」
「ばんざい。ばんざい。」
 みんなは、なみだを流して喜び合いました。

 それからは、石田野では、日でりが続き、用水の水がなくなると このため池の水を使うようになりました。
 ため池には、じょう止めというものがついていて、ため池から、下の方の田んぼに 水を送れるようになっているのです。
 今では、春先のつめたい水を あたためる工夫もされているそうです。十二貫野の広い田んぼは、用水と このため池のおかげで、毎年、毎年、暑い水不足の夏も、乗り切って、秋の刈り入れを むかえることができるそうです。


メニューのページにもどる