自作童話 

<< 平成12年度 魚津市自作童話大会 最優秀賞作品 >>


   「 うまくなるエッセンス 」
魚津市立村木小学校 6年 A.M 

「ただいまあ。よし、今日もいっちょうやったるか。」
この男の子の名前は菓子食太郎。キャンディー県のお菓市に住んでいる、元気いっぱいの小学6年生です。男の子だけどお菓子作りが大好き。だから、毎日学校から帰ってきては、色々なお菓子を作っているのです。今から、この食太郎の不思議な体験をお話します。えっ、おまえは誰かって?私ですか。私はお菓子の神様。そう、神様なんです。

「えーっと、生クリームと砂糖をまぜてと、これをスポンジにデコレーション。ああ、あとイチゴをのせてと。よし、できた。」
「おやおや、食太郎は、またケーキなんか作って。たまには勉強でもしなさいよ。」
「わかってるよ。お母さん。まあ、これでも食べてリラックスしてよ。」
「味はまあまあね。せめて勉強もこれくらいがんばってよ。」
「味はまあまあか。お菓子作りへの道はきびしいな。気晴らしに少しさんぽでもしてくるか。」
食太郎がやってきたのは、大好きなソーダー川の河原です。いやなことがあると、よくここに来るのです。
「おや、何か光っている。こっちに流れてくるぞ。」
「何だろう。虹色に光っている。うん?何か書いてあるぞ。でも見たこともない文字だなあ。」
それは、不思議な形をした小さな美しいビンでした。食太郎はそおっとビンのふたを開けてみるとフワッと何ともいい香りがただよってくるではありませんか。この花畑のような甘いかおりはお菓子作りに使えそうです。
「カスタードクリームはできたぞ。あとは生クリームをホイップして、この不思議なエッセンスを少々。よし、シュークリームの出来上がり。お母さん、食べてみて。」
「う〜ん。うまい。食太郎、これ、すごくおいしいよ。どうしたの。急にうまくなったんじゃない。」
「うまい?うまくなる。そうか。これはきっとうまくなるエッセンスだ。そうにちがいない。やったあ。これでぼくは、お菓子作りの名人になれるかも・・・。」
それから、食太郎はうまくなるエッセンスのおかげで次から次へとうまくなるエッセンスを使ったお菓子を作り出したのです。次から次へとおいしいおかしを作り出しまた。食太郎が作り出すお菓子は、近所でもおいしいと評判になりました。中には、お金をはらってもよいから、わけてほしいと申し込んでくる人まであらわれました。今や食太郎のお菓子はキャンディー県中の評判となっていました。
 ある日新聞を見ていたお父さんが、ある記事に目をとめました。
「食太郎。『ジュニアお菓子作り世界選手権』があるんだって。会場はケーキ県チョコ市パフェ会館。出てみたらどうだい。」
「うん。出る出る。エッセンスもまだあるし。」
「エッセンス?」
「いや、何でもない何でもない。何を作ろうかな。でも、このエッセンスがあれば、きっとうまくいくぞ。」

「さあ。いよいよジュニアお菓子作り世界選手権が始まります。すでに五人の選手が開始を今やおそしと待ちかまえています。」
「エントリーbPフランスからきたおしゃれなラン・モンブ君。エントリーbQ中国生まれのお菓子好き、とうふ・杏仁君。bR北極から来た白の戦士、マッシュ・マロマロ君。bSアメリカから来たなぞの貴公子ミスターケーキ。そして、日本の名パテイシェ、菓子食太郎君です。制限時間はニ時間。レディー、ゴー。」
選手たちはいっせいにお菓子作りに取り組みはじめました。食太郎はというと、
「柿のうす切りに砂糖を入れてにてうらごししてと、あずきを加えてまぜる。青竹に入れて、冷やして固める。あっ、エッセンス、エッセンス。あれ、ない。ない。ない。ない。一てきもない。どうしよう。」
食太郎のひたいからは、あぶら汗が流れています。その間にも四人の選手は順調に仕事を進めています。
「残り1分。」
「時間が無い。しょうがない。エッセンスなしで仕上げよう。」
ほとんどの選手は、よゆうの笑みをうかべています。
「終了―。」
「さあ、終了です。選手のみなさんのお菓子を見てみましょう。フランスの国旗のような三色鮮やかなケーキ。黒ゴマがたっぷりかかったチーマーカオ。北極の雪のように白いメレンゲのケーキ。いかにもアメリカらしいビックなハンバーガー型ケーキ。秋の味覚の柿たっぷりの青竹ようかん。審査員のみなさん、判定をお願いいたします。」
「うますぎる。」
「この味なんともいえないねえ。」
「砂糖と柿と小豆だけとは思われない味だ。」
「このメレンゲふわふわでなめらか。」
どのお菓子も力作ぞろいです。
さあ、審査が終わりました。結果発表です。食太郎は、すっかり自信をなくしていました。
「第三位。ラン・モンブ君。おめでとう。第二位。一位と紙一重で、ミスターケーキ。そして輝く第一位は、柿とあずきを使ったやわらかな甘みがすばらしかった、青竹ようかん、菓子食太郎君と決定いたしました。おめでとうございます。」
「やったあ。うまくなるエッセンスなしでもおいしいお菓子が作れたんだ。たくさんの人がおいしいと言ってくれたぞ。自分の力で優勝できたんだ。」

おっほん、みなさん、わかったかな。このようにやればできることはたくさんあるのです。途中であきらめたり、初めからやらなかったりしたらだめなのです。つらくなったときは、この食太郎君を思い出してもうひとふんばりしてごらん。きっと道が開けるよ。では私は、また、このエッセンスを見つけてくれる人が現れるまであっちの世界でお菓子を食べながらゆっくりと待っていることにします。じゃあね。
(おわり)

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