U 本 校 児 童 の 実 態

1 理科嫌い

数学が好き

理科が好き

マレーシア

95

マレーシア

96

シンガポール

79

シンガポール

86

イギリス

77

イギリス

83

米国

69

米国

73

台湾

56

台湾

69

韓国

54

オーストラリア

66

日本

48

日本

55

モルドバ

43

韓国

52

国際平均

72

国際平均

79

表1   (1999年 中学2年相当)

 

テキスト ボックス: 数学が好き	%	理科が好き	%
マレーシア	95	マレーシア	96
シンガポール	79	シンガポール	86
イギリス	77	イギリス	83
米国	69	米国	73
台湾	56	台湾	69
韓国	54	オーストラリア	66
日本	48	日本	55
モルドバ	43	韓国	52
国際平均	72	国際平均	79
表1   (1999年 中学2年相当)


理科ばなれが言われて久しい。例えば、1995年の国際数学・理科教育調査報告書(IEA)によると、理科が好きな日本の児童・生徒の割合は、小学4年で85%、中学2年では56%である。1999年の調査(表1)では小学校のデータはないが、中学2年生は国際平均よりも低い55%である。つまり、1995年に4年生であった子供の多くが理科好きだったのに、中学2年生になって理科嫌いに変わった子が多くいると言える。

また、1999年の調査の「生活の中で大切」は、さらに低く39%(1995年は48%)にとどまっている。将来、数学や科学を使う仕事をしたいという生徒も2割以下だという。     

表2 理科の勉強が好きだ

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

3年

53.4

23.9%

6.8%

4.5

9.1

4年

33.3

31.1

10.0

8.9

11.1

5年

34.1

34.1

16.5

4.7

5.9

6年

15.0

41.3

20.0

13.8

6.3

全体

34.4

32.4

13.1

7.9

8.2

 

テキスト ボックス: 表2 理科の勉強が好きだ
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
3年	53.4%	23.9%	6.8%	4.5%	9.1%
4年	33.3%	31.1%	10.0%	8.9%	11.1%
5年	34.1%	34.1%	16.5%	4.7%	5.9%
6年	15.0%	41.3%	20.0%	13.8%	6.3%
全体	34.4%	32.4%	13.1%	7.9%	8.2%

 では、本校の場合はどうなのであろうか。まずは理科嫌いについて見てみたい。

表3 理科の授業がどの程度分かりますか

 

よく分かる

だいたい分かる

分かることわからないことが半々

分からないことが多い

ほとんど分からない

3年

25.0

53.4

11.4

4.5

2.3

4年

25.6

38.9

17.8

3.3

1.1

5年

23.5

50.6

18.8

0.0

0.0

6年

12.5

55.0

22.5

1.3

2.5

全体

21.9

49.3

17.5

2.3

1.5

 

テキスト ボックス: 表3 理科の授業がどの程度分かりますか
	よく分かる	だいたい分かる	分かることわからないことが半々	分からないことが多い	ほとんど分からない
3年	25.0%	53.4%	11.4%	4.5%	2.3%
4年	25.6%	38.9%	17.8%	3.3%	1.1%
5年	23.5%	50.6%	18.8%	0.0%	0.0%
6年	12.5%	55.0%	22.5%	1.3%	2.5%
全体	21.9%	49.3%	17.5%	2.3%	1.5%

下の表を見ると分かるように、理科が好きな児童は3年生以上では約67%となっている。前述の4年生で比べると64%で、1995年の調査(IEA)の85%よりも約20%低くなっている。ただし、「理科が好きか」と聞くのと「理科の勉強が好きか」と聞くのでは、子供の受け取り方に違いがあるだろうから単純には比較できないものの、それを考慮したとしても、本校の児童の理科好きはあまり高いとはいえない。仮にこの67%という数字を1999年の中学2年生相当の表と比べると、国際平均よりも12%低い。一般に学年が上がるにつれて「理科が好き」という子供が減ることを想定すると、小学校の段階で67%ということは、調査対象となっている中学2年に現在の児童が進級していった場合、55%という値よりもさらに低くなることが予想されるのである。

「好きこそものの上手なれ」ということからすると、このように理科の好きな子が少ないということは学習の理解度にも影響があると考えられる。ところが、表3を見ると、理科の授業が分かると答えている子供が72%と67%を上回っているのである。つまり、理科は好きではないが、勉強は分かるという子供がいるのである。表4にそのことが如実にあらわれている。

理科が嫌いであっても、53%の子供たちは理科の勉強が分かると答えているのである。もちろん、理科が好きな子で理科の授業が分からないあるいは分からないことがあると答えている児童が13%なのに対して、理科が嫌いな子では43%とその差は大きいことは事実ではある。理科の勉強が分かると言うことが理科好きな子供を育てる第一歩であることには違いないが、理科の授業が例え理解できても嫌いだという子が多いこともまた事実なのである。

表4 理科の授業がどの程度わかりますか。

 

よく分かる

だいたい分かる

分かることわからないことが半々

分からないことが多い

ほとんど分からない

理科が好き

29.3

53.7

11.4

1.3

0.4

理科が嫌い

8.0

45.0

34.0

5.0

4.0

 

テキスト ボックス: 表4 理科の授業がどの程度わかりますか。
	よく分かる	だいたい分かる	分かることわからないことが半々	分からないことが多い	ほとんど分からない
理科が好き	29.3%	53.7%	11.4%	1.3%	0.4%
理科が嫌い	8.0%	45.0%	34.0%	5.0%	4.0%

2 理科の有用性

表5 理科を勉強すれば、普段の生活や社会に出て役立つ

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

3年

43.2

26.1

10.2

3.4

14.8

4年

24.4

30.0

14.4

8.9

16.7

5年

27.1

32.9

15.3

5.9

15.3

6年

13.8

31.1

25.0

13.8

12.5

全体

27.4

30.0

16.0

7.9

11.1

 

テキスト ボックス: 表5 理科を勉強すれば、普段の生活や社会に出て役立つ
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
3年	43.2%	26.1%	10.2%	3.4%	14.8%
4年	24.4%	30.0%	14.4%	8.9%	16.7%
5年	27.1%	32.9%	15.3%	5.9%	15.3%
6年	13.8%	31.1%	25.0%	13.8%	12.5%
全体	27.4%	30.0%	16.0%	7.9%	11.1%

第3回のIEA調査によれば、「理科は生活の中で大切」と思う子は、中学2年生で39%(1995年では48%)であるが、本校の児童の場合、多少質問が違うが約57%が理科の有用性を感じている(表5)。中学2年生との比較ではあるが、これは39%あるいは1995年の48%を上回っている。しかし、国際平均が79%であることを考えると、決して満足できるものではない。

表6 将来、理科の勉強を生かした仕事をしたい

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

3年

17.0

17.0

13.6

26.1

23.9

4年

8.9

12.2

18.9

30.0

24.4

5年

14.1

17.6

21.2

32.9

10.6

6年

6.3

10.0

23.8

41.3

15.0

全体

11.7

14.3

19.2

32.4

18.7

 

テキスト ボックス: 表6 将来、理科の勉強を生かした仕事をしたい
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
3年	17.0%	17.0%	13.6%	26.1%	23.9%
4年	8.9%	12.2%	18.9%	30.0%	24.4%
5年	14.1%	17.6%	21.2%	32.9%	10.6%
6年	6.3%	10.0%	23.8%	41.3%	15.0%
全体	11.7%	14.3%	19.2%	32.4%	18.7%

また、「理科の勉強を生かした仕事がしたい」という質問には、1995年のIEAの調査では中学2年生で20%であるが、本校の児童については26%と多少上回っている(表6)。しかし、国際平均は47%であり、タイの79%やシンガポールの61%、アメリカの50%と比べるとかなり低い値である。

表8 理科を勉強すれば普段の生活や社会に出て役立つ

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

理科が好き

35.4

35.4

12.2

3.1

14.0

理科が嫌い

12.0

22.0

27.0

20.0

19.0

 

テキスト ボックス: 表8 理科を勉強すれば普段の生活や社会に出て役立つ
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
理科が好き	35.4%	35.4%	12.2%	3.1%	14.0%
理科が嫌い	12.0%	22.0%	27.0%	20.0%	19.0%

表7 理科の勉強は大切だ

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

理科が好き

58.1

31.9

2.6

1.3

6.1

理科が嫌い

24.0

37.0

17.0

9.0

13.0

 

テキスト ボックス: 表7 理科の勉強は大切だ
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
理科が好き	58.1%	31.9%	2.6%	1.3%	6.1%
理科が嫌い	24.0%	37.0%	17.0%	9.0%	13.0%

 理科(科学)が生活の中で役立っていることを子供たちは実感できていないのであろう。携帯電話にしろコンピュータにしろ、子供たちの大好きなゲームにしろ、全て科学の恩恵である。しかし、そのことと学校の理科とがつながらないのである。学校知と生活知の乖離とも言える。従って、当然のこととして理科(科学)を生かした仕事をしたいという思いも浮かばないのである。私たちの生活は科学の力がなくては成り立たない。そのことを実感するには、学校の理科と生活の中の理科(科学)を橋渡しする取り組みが必要なのかもしれない。

 先に、理科嫌いについて述べたが、理科の有用性を感じることができれば、当然そのことが理科好きにもつがなるであろう。理科嫌いの一つの要因として理科の有用性を子供が感じ取っていないということも考えられる。

表7や表8にもそのことがあらわれている。理科が好きと答えている子供の実に90%が理科の勉強は大切だと答えて(表7)、71%が理科の勉強が生活の中で役立つと感じている(表8)。しかし、理科が嫌いな子の場合、それぞれ61%(表7)と34%(表8)である。さらに、理科が嫌いな子の66%(表8)が、理科が生活の中で役立っていると思っていないか、あるいは分からないと答えており、これらのことからも、理科が大好きな子供を育てるためには、理科が生活の中で役立っていることを実感させる取り組みが大事だろうと考えられる。

表9 理科を勉強すれば普段の生活や社会に出て役立つ

(理科の勉強が理解できると答えている児童)

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

理科が好き

35.8

35.8

12.6

2.1

13.7

理科が嫌い

9.4

18.9

24.5

24.5

22.6

(理科が嫌いかつ理科の勉強が理解できないと答えている児童)

理科が嫌い

6.8

34

18.2

18.2

20.5

 

 

テキスト ボックス: 表9 理科を勉強すれば普段の生活や社会に出て役立つ
(理科の勉強が理解できると答えている児童)
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
理科が好き	35.8%	35.8%	12.6%	2.1%	13.7%
理科が嫌い	9.4%	18.9%	24.5%	24.5%	22.6%
(理科が嫌いかつ理科の勉強が理解できないと答えている児童)
理科が嫌い	6.8%	34%	18.2%	18.2%	20.5%


理科嫌いのところで、理科の勉強が理解できても理科は嫌いだという子供が多くいることを述べた。表9では、理科が好きな子の場合、理科の勉強が理解できていても出来ていなくても、理科が生活で役立つ(有用性)という考えに大きな差がないのに対して、理科が嫌いな子の場合、理科の勉強が理解できている子とそうでない子に多少の違いが見て取れるのである。

理科の勉強が理解できているにもかかわらず、理科が生活の中で役立つと考えている子は28%なのに対して、勉強が分からない子は41%と、理科の有用性を認めているのである。そのことは、「理科が好きな子に、理科の有用性を感じている子が多い。だから、理科の有用性を感じられるように理科の勉強の理解度を高めればよい」と単純には導き出せないことを示している。勉強が分かることとその学習の有用性とは必ずしも結びつかないといえる。勉強が分からなくても、その有用性を感じている子が多く存在するのである。理科が生活に役立つということを実感させることは、理科好きを増やすために大事なことではあるが、その手段として勉強の理解度を上げる取り組みだけでは不十分といえるのではないだろうか。

 

3 理科好きと学習

理科の学習は、科学的な知識を得るというだけでなく、課題を見出す観察力や集中力、課題を解決するための論理的で柔軟な思考力と独創性、物の理を追い追い求める好奇心や持久力、人と協力して課題を解決していくための共感性や自主性など、いわゆる機能的な学力を育てる。

表10 理科を勉強すれば、疑問を解決したり

予想を確かめたりする力がつく

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

分からない

理科が好き

43.2

34.1

8.3

7.0

7.0

理科が嫌い

18.0

24.0

20.0

21.0

16.0

 

 

テキスト ボックス: 表10 理科を勉強すれば、疑問を解決したり
予想を確かめたりする力がつく
	そう思う	どちらかといえばそう思う	どちらかといえばそう思わない	そう思わない	分からない
理科が好き	43.2%	34.1%	8.3%	7.0%	7.0%
理科が嫌い	18.0%	24.0%	20.0%	21.0%	16.0%


自分たちで仮説や予想を立て、実験方法や観察の方法、手順を考える。そうして失敗や成功を繰り返しながら結論を導き出していく過程が理科の学習の面白さである。そうして、子供たちには問題解決力が育っていくのだろうと思う。

理科が好きな子はこのような理科の学習の効果を実感している。表10では、理科が好きな子の77%が理科を勉強することで疑問を解決したり予想を確かめたりする力がつくと感じているのである。しかし、理科の嫌いな子は42%と半数にも満たない。

理科嫌いの子でも、表7に示されているように、理科が大切だと答えているものが61%はいた。しかしながら、大切な理由と考えられる「生活や社会に出て役立つ」は先に述べたように34%であったし、「疑問を解決したり予想を確かめたりする力がつく」も42%しかいなかった。ここには載せてないが、「理科を勉強すれば受験に役立つ」や「自分の好きな仕事につくことに役立つ」と考えている子も、理科嫌いの子ではそれぞれ49%、20%と少ないのである。勉強は大切だと思いながらも、どうして大切なのかということが実感できていないのであろう。親や先生が理科は大切だというから何となく大切なのだと感じているのだろうか。生活の中で理科がどんな役割をしているのか、理科を勉強することで自分にどんな力が付いてきたのか分からない。だから、大切だという回答とその理由と考えられる回答に開きがあるのかもしれない。

 

4 自然体験と理科好き

表11 自然体験の有無(その1)

 

昆虫採集をした経験

カエルやオタマジャクシをつかまえた経験

花や野菜を育てた経験

日の出を見た経験

月や星座をながめる経験

理科が好き

49.4

53.3

68.1

29.7

54.1

理科が嫌い

35.0

37.0

42.0

19.0

30.0

 

 

テキスト ボックス: 表11 自然体験の有無(その1)
	昆虫採集をした経験	カエルやオタマジャクシをつかまえた経験	花や野菜を育てた経験	日の出を見た経験	月や星座をながめる経験
理科が好き	49.4%	53.3%	68.1%	29.7%	54.1%
理科が嫌い	35.0%	37.0%	42.0%	19.0%	30.0%


表12 自然体験の有無(その2)

 

日の入りを見た経験

天体望遠鏡で星を見た経験

石や化石を採集した経験

雲の形や流れるようすを観察した経験

ペットを育てた経験

理科が好き

54.6

18.8

31.9

70.7

60.7

理科が嫌い

32.0

10.0

16.0

51.0

50.0

 

 

テキスト ボックス: 表12 自然体験の有無(その2)
	日の入りを見た経験	天体望遠鏡で星を見た経験	石や化石を採集した経験	雲の形や流れるようすを観察した経験	ペットを育てた経験
理科が好き	54.6%	18.8%	31.9%	70.7%	60.7%
理科が嫌い	32.0%	10.0%	16.0%	51.0%	50.0%


解剖学者で脳の研究で世界的な権威の養老猛司さんは、コンチュウの研究家としても有名で、自らさまざまな捕虫用の道具を工夫しておられる。そしてゾウムシの研究で有名である。他にもフランス文学者の奥本大三郎さん、数学者の森毅さん、漫画家の手塚治虫さん、ノーベル化学賞の白川英樹さんや福井謙一さんも、昆虫少年であった。

奥本大三郎さんはフランス文学の専門家でありながら日本昆虫協会の会長でもある。森敦さんは、ある新聞の対談で「僕は子どものころ豊中に住んでいて、手塚治虫とは同じ阪急宝塚沿線育ち。お互い昆虫少年だったしね、共通点は多いねんけど」というほどの昆虫少年で、昼は学校にも行かず昆虫採集に明け暮れ、夜はその分勉強をしたと語っておられる。手塚治虫さんは、その名の示すとおりオサムシの魅力に取り付かれ、子供のころは昆虫採取に夢中になっていた。そして、中学2年の時には自ら昆虫研究会をつくり、手書きの雑誌や図鑑をつくり、その細密なスケッチはとても中学2年生とは思えないものだそうである。白川英樹さんはNHKのアナウンサーのインタビューに「私は少年時代、昆虫に夢中になっていて学校の授業なんか聞いていないで朝から晩まで野山を走り回って虫を採っていました。それでいろんな昆虫を採集していました。それが今の科学への興味につながっていると思います」と答えておられる。福井謙一さんは、大人になっても海外での研究の時も必ず捕虫網を持って行かれて、時間があまるとその近辺の昆虫を採ったそうである。このように、学者の中には、子供の頃の原風景としての昆虫少年がとても多いのである。

昆虫に限らず、理科が好きになった人にそのわけを尋ねてみると、望遠鏡で初めて見た月の美しさに感動したとか、カエルつかみをしていて、目の前で素早く動くものは何でも餌だと思うカエルの性質に子供ながらにおかしさを感じたとか、両親に買ってもらった顕微鏡でいろいろな花の花粉を見つけたり、池の中のプランクトンを見つけたりしたときとても嬉しかったとか、子供の頃の豊かな自然体験がきっかけになっている人が多いのである。

本校児童の調査においても理科好きの子供は、理科嫌いの子供より昆虫採集をしたりカエルやオタマジャクシをつかまえたりした経験が多い。花や野菜を育てた経験も、日の出や日の入りを見たり星空を眺めたりした経験も多い。理科好きの子にはそうでない子に比べて自然体験の豊かな子が多いといえる。

しかし、それは比較の上でのことであって、絶対数は決して多くない。全体的な傾向としては、子供たちの自然体験は少ないと言わざるを得ない。

毎日新聞の「【視点】独創性を育むもの」の中で、教育ジャーナリスト矢倉久氏は「・・自伝を読むと、生い立ちの中にも独創性を育む要因はいろいろあることがわかるが、何人かに共通しているのは自然観察を趣味にしていたことだ。田中耕一さんは、夏休みに山や川で植物採集をして名前を調べるのが趣味だったという。1981年のノーベル化学賞受賞者・福井謙一さんも子どものころ、昆虫採集や鉱物採集に夢中だった。2000年に、同じく化学賞に輝いた白川英樹さんも「自由に野山を歩いて虫を取ったり草を取ったり、いろいろなものを見るのが楽しかった」と述べている。子どものころのこうした体験は、自然の不思議さに目を開かれ、草花や昆虫にもいろんな色や形があるという多様性を知る機会になる。このことが、研究テーマを、実験方法を、多角的に考える柔軟な思考能力(創造力)を培うのではないかと私は思う。福井さんも「自然認識が科学の創造性に最も影響を与える」と述べている。その認識の多様性が、実験中のミスをミスとせず、ミスの中から新しい発見につながっていくのだろう。白川さんは学生の実験ミスに注目して電気を通すプラスティックを発見した。田中さんもグリセリンと金属微粒子を誤ってたんぱく質に混ぜたが、やり直しをせずに取り組んだ結果がノーベル賞への道を開いた。田中さんは「失敗の中に新しい発見がある」と言っている。実はノーベル賞の先輩の湯川秀樹さんも同じようなことを言っているのだ。要するに、感性の柔らかい子ども時代に自然体験をせず、進学塾に通い詰めて、用意された答に合わせる「点取り技術」だけを身につけ、失敗を恐れる優等生になっては、とても独創性は発揮できない、ノーベル賞も取れないということである。」と述べている。

理科が好き子供を育てるには、その基盤として、自然との触れ合いの中で子供たちに豊かな感性を育んでいくことも大切なのかもしれない。理科や総合の時間だけでなく、特別活動(学校行事を含む)などあらゆる教育活動の中で自然と触れ合う機会を意図的に設けることも必要であろう。また、学校の教育活動だけでは限界もあり、PTAや地域の諸団体との協力、そして何よりも家庭の理解と協力を得ることが一番大切なように感じる。

 

表13 おもちゃや電気製品を分解する

 

よくある

何度かある

あまりない

ほとんどない

理科が好き

21.8

23.1

18.8

34.9

理科が嫌い

18.0

12.0

18.0

51.0

 

テキスト ボックス: 表13 おもちゃや電気製品を分解する
	よくある	何度かある	あまりない	ほとんどない
理科が好き	21.8%	23.1%	18.8%	34.9%
理科が嫌い	18.0%	12.0%	18.0%	51.0%

5 ものづくり経験と理科好き

表14 雑誌の付録の薬品や道具を使って実験をする

 

よくある

何度かある

あまりない

ほとんどない

理科が好き

13.5

19.7

21.4

45.5

理科が嫌い

9.0

13.0

14.0

64.0

 

テキスト ボックス: 表14 雑誌の付録の薬品や道具を使って実験をする
	よくある	何度かある	あまりない	ほとんどない
理科が好き	13.5%	19.7%	21.4%	45.5%
理科が嫌い	9.0%	13.0%	14.0%	64.0%

ノーベル賞の田中さんは「黙々とのこぎりの目立てをしている父親の背中に教えられた」と話しておられる。宇宙飛行士の毛利 衛さんは「子供の頃から機械いじりが大好きでした。また、NHK教育テレビの「科学史物語」を欠かさず見ていました」と言っておられる。理科が好きになるきっかけに、子供のころよくおもちゃを分解してあそんだとか、機械いじりをしたとか、自分でモノを作って遊んだと言う体験を挙げている人も多い。理科好きの子供を育てる基盤として、豊かな自然体験の他にモノづくりの体験も大切なのかもしれない。

今のおもちゃはあまりにも完成されていて、「どうして動くのかな」「どういう作り方なのかな」といった子供の素朴な疑問に対してはブラックボックスなのである。かつてのブリキのおもちゃは、隙間からちょっとだけ歯車が見えたり、ゼンマイが見えたりして、子供の「どうして」という疑問をくすぐるものであった。その内どうしてもおもちゃの中を見ないではいられなくなり、いっぱしのエンジニアのように分解してしまうのである。

本校の児童の場合、おもちゃなどを分解した経験は(表13)、理科が好きな子で45%、理科の嫌いな子で30%となっており、やはり理科好きの子の方が多くなっている。とはいうものの、半数以上、理科嫌いの子にいたっては70%近くの子が機械いじりの経験がないのである。このような実態を踏まえて、理科や総合的な学習などでモノづくりの体験を取り入れていくことが大事なのではないだろうか。また、モノを分解・組み立てるという体験が自由にできる場や機会を設けることも必要のように思う。

 

表15 自然や科学の番組を見る

 

よくある

何度かある

あまりない

ほとんどない

理科が好き

26.6

29.7

21.0

20.5

理科が嫌い

12.0

25.0

31.0

31.0

 

テキスト ボックス: 表15 自然や科学の番組を見る
	よくある	何度かある	あまりない	ほとんどない
理科が好き	26.6%	29.7%	21.0%	20.5%
理科が嫌い	12.0%	25.0%	31.0%	31.0%

6 理科好きを育てる環境

表17 友達や家族と野原や山に出かけ自然に触れる

 

よくある

何度かある

あまりない

ほとんどない

理科が好き

29.7

31.9

21.8

15.7

理科が嫌い

18.0

27.0

27.0

28.0

 

テキスト ボックス: 表17 友達や家族と野原や山に出かけ自然に触れる
	よくある	何度かある	あまりない	ほとんどない
理科が好き	29.7%	31.9%	21.8%	15.7%
理科が嫌い	18.0%	27.0%	27.0%	28.0%

表16 友達や家族と博物館や科学館を見学する

 

よくある

何度かある

あまりない

ほとんどない

理科が好き

21.0

20.1

27.9

30.1

理科が嫌い

7.0

12.0

31.0

50.0

 

テキスト ボックス: 表16 友達や家族と博物館や科学館を見学する
	よくある	何度かある	あまりない	ほとんどない
理科が好き	21.0%	20.1%	27.9%	30.1%
理科が嫌い	7.0%	12.0%	31.0%	50.0%

表15,16,17から、理科の好きな子は嫌いな子よりも「自然や科学に関する番組」を見るし、「博物館や科学館へ出かける」ことも多いこと、さらに「野原や山などへ出かけ自然と触れ合う」ことも多いことが分かる。理科が好きだからそういった体験が多いのか、そういう体験が多いからそれがきっかけとなって理科が好きになったのかはこれだけでは分からない。しかし、今の子供たちの環境を考えると、何らかの外部からの働きかけがなければ、子供たちは暇な時間、テレビやマンガを見ているか、外へ出かけないで家の中でテレビゲームに夢中になっているだけだろう。子供が科学番組に興味を示したり、博物館へ出かけたり、野原をかけまわったりするのは、このようなことを想像するに、子供だけでできるものではないだろう。家族、特に親の理解あるいは家族から誘い水があってこそ子供は動き始めることができるのではないだろうか。

家族のものが自然や科学の番組を見ていれば、そばにいる子供も一緒に見るだろうし、家族のものが博物館や科学館、自然豊かなところへと子供を誘うから出かけるのだと思うのである。そう考えると、理科好きな子供の家庭には理科好きにさせる雰囲気や環境、家族のものの理解があるともいえる。だとすれば、家庭の協力を得るための啓発活動なども大切になってくる。親子で進める自由研究などは、まさにあつらえむきだと考える。他にも、親子サイエンスショーや親子モノづくり教室、科学教室なども考えられる。さらに保護者の方に科学技術の大切さを知ってもらう講演会などをPTAと協力して企画することも考えられる。