平成15年度 吉島小学校研究構想 理科大好きスクール研究指定

T 研究の構想

1 研究主題

自然に親しみ、見通しをもって自然の事物・事象を追究する児童の育成

2 研究のねらい

一人一人の児童が自然に親しみながら科学を楽しく学ぶことにより、創造性(独創性、知的好奇心、探求心)をもち、主体的に事象にかかわりながら問題を発見したり解決したりする意欲や能力を育てるとともに、自然の恩恵に感動する心や感謝する心など、豊かな人間性を育てる。

3 研究のねらいの意味

(1)自然に親しむ

ここでいう「自然に親しむ」とは、ただ漠然と子供を自然豊かな場所に放り出すことをいうのではない。児童の実態調査から、確かに理科が好きな子は嫌いな子よりも自然体験が多かった。だが、自然に親しむ機会が多いから生きものや自然事象への興味・関心が高まると短絡的に結びつけることは出来ない。身近すぎるがゆえに興味や関心が起きないということもある。

山沿い地域、市街地域、平野地域の3地域に分類し、そこでの子供たちの理科の教材への興味・関心を調査した研究によれば、四季を通じた自然観察を必要とする一連の単元について、もっとも自然が豊かな山沿い地域の子供が一番関心が低かったという。また、メダカについても、もっともメダカの多い平野地域の子供の関心がもっとも低く、同じように海藻についても、内陸部も海岸部も差がなかったという。従って、自然に親しむというのは、意図的で継続的な自然体験というふうに考えたい。

(2)科学を楽しく学ぶ

理科に限らず楽しく子供が学習に取り組めるように、あっと言わせるような導入を工夫したり、子供の興味や関心を引くような実験やモノ作りを授業に取り入れたりする試みがよく行われている。それは確かに一時的には効果がある。だが、そのようなイベント的学習の連続には限界があり、普段の授業との落差が大きい。常に外部から刺激を与え続けなければ意欲が継続しないということになる。それは、ともすれば好奇心だけで終わる授業になってしまい、そのような授業においては、教師の働きかけがないと学習が始まらないし、持続もしない。「科学を楽しく学ぶ」というのは、このようなイベント的学習だけを目指すのではない。

ところで、学習に主体的でない子でも、あるいは意欲のない子でも、生活することには意欲的である。そこで、この「生活の意欲」と「学習の意欲」を区別しない学習、つまり、子供の興味・関心から、理科ならば生活の中の不思議と「学び」をつなげていくような学習を展開する。そのような学習での成果は、子供に「できた」「分かった」という達成感を与えるだけでなく、「学ぶ喜び」「学習の有用性」つまり「やってよかった」ということを実感させることができる。学校という文脈と日常の生活という文脈を橋渡ししていく「学び」の創造が、科学の有用性を実感し楽しく学ぶことにつながると考える。

(3)創造性

○ 創造

創造というのは「新しくて価値のあるものを生み出すこと」と捉える。新しいだけでなく、多少の評価がなされたときに価値があるものであることが創造である。

○ 創造性

創造性というのは、「創造をする能力とか態度」と捉える。能力としては独創性があるだろうし、態度としては知的好奇心や探究心があると考える。新しくて価値のあるものを生み出すめの独創性や知的好奇心、探究心が創造性であるといえる。

○ 「誰」にとっての新しさと価値か

広島大学の中原忠男先生は、算数の「創造性の基礎を培う」ということにふれて、「新しくて価値あるものを生み出すというとき、新しいというのは「誰」にとって新しく、価値があるというのは「誰に」とって価値があるのか」ということが大事であると言っておられた。理科においても同じように考えることができる。

新しさと価値とは、アイディアを考え出した子供にとって新しくて、そのアイディアを考え出した子供にとって価値があれば、まさしく創造だといえる。しかし、その価値というものを一人の子供、個別的なレベルで考えるだけでよいのか。

    

価値

  新しさ

様相1

様相2

様相3

子供

個人

教室

社会

様相1

子供

個人

T―1

T―2

T―3

様相2

教室

U―1

U―2

U―3

様相3

社会

V―1

V―2

V―3

次の図は、縦軸に誰にとっての新しさか、横軸には、誰にとって価値があるのかを示したものである。つまり、子供あるいは個人にとって新しいという見方もあるだろうし、クラスの仲間全体にとって新しいというレベルもあるだろう。さらに社会全体にとって新しいというレベルもあるだろう。価値についても、それを考え出した子供にとって価値があるというレベルと、「なるほどそれがいい」「これは簡単だ」「これなら誰でも使える」というクラス全体にとって価値があるというレベル。さらに、学校や社会全体にとって価値があるという大きく3つに分けて、それぞれの価値や新しさを捉えることができる。右図は、一人のレベルと、グループのレベルと普遍的な一般的なレベルと分けて、価値と新しさを捉えたものである。      (広島大学教授 中原忠男 「創造性の基礎を培う」より)

このマトリックス見て、創造をどこのレベルのものとして考えるか、理科教育における創造をどのレベルで捉えるのか。V―3のレベルは無理としても、T―1のレベルで満足するというのもいかがだろう。学校の授業の中でめざす創造性はU―2のレベルをめざすべきと考える。

(4)主体的な事象へのかかわり

ある調査によると、大学の1年生に入学後数ヶ月してから入試と全く同じ問題をさせたところ、正しく答えられたのは15〜20パーセントだったという調査結果がある。また、医大生に鶏の絵を描かせたところ、3本脚や4本脚の絵を描いたという話もある。学校で学んだものがほとんど自分のものとなっていないのである。何もこんな例を出さなくとも、私たちが日頃接している子供たちを見ていても、「この前勉強したばかりなのに」と子供の実態に肩を落とすことはある。それとは反対に、「教えてもいないのにどうしてできるの!」と驚くこともある。ローマ字を勉強していないのに、パソコンでローマ字入力をする子がいる。教師が図鑑片手に道端の花を調べている横で、「先生これ○○っていう花だよ。あれは△△。きれいだね!」とすらすらと出てくる子がいる。なぜこのようなことが起きてくるのか。

前者の場合は、勉強そのものが目的となり、学習が自分から切り離されたものとなっている。それは「苦行」でしかない。だからこそ、何年もかけて学んだことがほんの数ヶ月で頭から剥げ落ちてしまうのであろう。後者の子供の場合、日常生活の中での様々な事象とのかかわりを通して、自分から進んで何かに働きかけた結果として学んだものである。「勉強」が目的ではなく、何かをやっているときに『勉強』が結果的にともなってきたものである。やらせではなく、日常の生活の中で「いっぱし」の人としての実感を味わう納得のできる営みが、結果として『学び』になっているわけである。ここでいう「主体的に事象にかかわる」というのは、このような子供の姿を指す。つまり、「学び」の対象を自分自身の生活や活動の対象としてとらえ、その中から自分なりの新しい世界を創り出していこうとする姿である。

(5)自然の恩恵に感動する心や感謝する心

 自然を大切にしようという一方で、草花遊びを通して、花をもいだり枝を折ったりしている。それは自然保護の観点からすすめられないと考える人がいる。だが、小さいときのそういった体験や小さな虫を殺してしまった体験が、子どもたちに自制しあう心やいたわりの心を育てるともいえないだろうか。そういう経験をした子は、むやみに草花をむしりとったり、残酷に生き物を扱うようなことはしない。動植物を本当に愛し、自然の大切にしていこうとする心を育てるには、動植物のことをよく知らなければできない。そのきっかけとなるのが草花の遊びや小さな生き物との遊びである。感受性や探究心の豊かな成長期に、樹木の下や草はらを遊びまわる体験は、独創性や思いやりの心を育てる。やがて、自然とやさしく付き合う術を体得し、ひいては、人間にもやさしくできる人に成長していってくれる。

   理科が好きになった人の子供の頃の原風景として、野山をかけめぐり昆虫採集に夢中になったこと、望遠鏡で初めて見た月の美しさに感動したこと、目の前で素早く動くものは何でも餌だと思うカエルの性質におかしさを感じたとか、両親に買ってもらった顕微鏡でいろいろな花の花粉を見つけたり、池の中のプランクトンを見つけたりして感動したことなど、豊かな自然体験の中で身を持って感じた自然の営みへの畏敬がきっかけになっている人が多い。 

自然の恩恵に感動する心や感謝する心」は、このような子供の豊かな自然体験の中で、子供なりに物の理を見つけ出そうとする真正な学びの中で育つものと考える。

4 研究の概要

@ 科学が好きな児童を育てる理科・生活科の授業改善

ア 学習が系統的、発展的に展開され、科学的な見方や考え方を育成できるように、三領域と学年間の指導内容の関連を図った指導計画を作成する。

イ 学識経験者や企業関係者、科学館・博物館関係者などの外部講師を招聘し、児童の興味・関心を引き出す授業を工夫する。

ウ 地域の自然や日常生活とのかかわりの深い素材やものづくりをリストアップする。 

エ 一人一人が興味・関心をもって問題を見付け、自ら解決する能力を身に付けさせるために体験的活動を重視し、五感を通して事象と十分に触れ合う場を設定する。(花、りんご、野菜、川、水、雪、海、樹木、蜃気楼、海底樹根、ほたるいか)

オ 様々な生き物に触れたり、生命の連続性や生きる条件を考えたりして、自然を愛する心情を育てる単元の構成を工夫する。(サケ、ザリガニ、熱帯魚、鳥)

A 教科との関連をはかった「総合的な学習の時間」の実施

ア 「富山湾の謎に挑む」というテーマを設定し、「蜃気楼」、「埋没林」、「ほたるいか」の三大奇観について自然事象の視点から調査研究活動(2か年継続)を進める。

イ 地域の水族館や埋没林博物館、蜃気楼研究会等との連携を図る。

ウ 地域の特産物であるりんご作りについて、果樹試験場との連携を図り、調査研究活動を進める。

エ ホームページを作成し、調査研究の成果を発信する。

B おもしろ科学教室の実施

ア 科学への興味・関心を高めるために、外部講師を招聘して観察や科学実験を行う。

C 親子自由研究の推進

ア 一人一人の児童が自己の興味・関心に基づく発達段階に応じた自由な課題を設定し、親子で追究することによって科学が好きな家族を増やす。

イ 休業日や夏休みを利用して継続的な研究活動を親子で行う。

D 教師のための理科実験・観察講座の実施

ア 教師の科学的素養と指導力の向上を図るため、外部講師を招いての教員研修を開催する。

イ 市内小中学校の受講希望者も受け入れ、指導力の底上げを図る。

5 授業における研究仮説

仮説1
一人一人が見通しをもって学習することができる教材や単元構想を工夫することにより、事象に積極的に働きかけ、問題意識をもって追究することができる。

仮説2
一人一人の考えのよさが生きる学習過程や学習形態を工夫することにより、進んで問題解決に取り組む態度が身に付くとともに、成就感や達成感を味わうことができる。
仮説3
一人一人の可能性や能力を伸ばす評価を工夫することにより、自ら学ぶ楽しさを味わい、追究の意欲を持ち続けることができる。

6 授業改善の視点

授業改善において検討すべき課題が成立する領域は「教師」「子供」「教材」「学習環境」の4つの関係の組み合わせであると考える。その組み合わせの視点から授業の改善を目指していく。

 

教師

子供

教材

環境

教師

 

 

 

 

子供

 

 

 

 

教材

 

 

 

 

環境

 

 

 

 

   授業を構想するに当たってよく吟味されるのは、子供と子供の関係や教室環境や教室文化、教師の教材観、教育内容に関する理解などであるが、とかく教師と教師、つまり、教師のアイデンティティー、教師の指導技術、教師の身体と言葉、教師の授業概念といったものが検討課題から抜け落ちてしまう。 全く同じ指導案で、発問も同じで子供もよく似た子供たちであり、板書も同じにして授業をしたとしても、一方は深まりのある授業になり、一方はしらじらとした雰囲気の授業になることがある。その大きな原因はこのマトリックスの教師と教師のところにある。いくら教材研究をし、児童の実態を把握し授業技術を細かく検討したとしても、最終的には授業の中に教師それぞれの個性、持ち味が出てくる。その教師の個性・持ち味と指導技術がしっくり来なければ予想したような授業にはならない。そこで、授業者の個性、持ち味が生きる授業の構想も授業改善の視点として重視していきたい。

8 研究計画

研究推進委員会

教科部会

総合部会

親子自由研究部会

15年度

〇各部会の年間計画作成
・理科室・準備室の整備
〇理科実験観察研修会T
〇第1回アンケート集計

・年間指導計画一覧表
・系統図作成

 

・研究年間計画作成
・各学年の学習内容の系統性、教科との関連の検討

新聞発行準備
・理科クイズの準備

(ビデオ撮り)

 

 

 

〇アンケート結果の考察
〇児童の実態把握と対策
〇理科実験観察研修会U
・おもしろ科学教室の計画

〇教材研究
・単元構想
・教材開発

 

 

授業研究

・素材・ものづくり・外部講師リストアップ
・学習過程の工夫
・学習環境の整備

・評価方法の工夫

 

・児童の実態把握と

・学習資料の収集

・外部講師のリストアップと打ち合わせ

 

 

〇学習環境整備
〇授業研究の推進
・授業実践記録のとり方(児童の学習記録)

・単元構想の修整
・学習資料の収集
・外部講師との打合せ
・ホームページの作成

・親子自由研究新聞第1号発行

 

10

〇科学教室の実施
10/9ワンダーラボ移動科学教室(3年・4年)

〇研究授業の計画・準備
・理科3年

・3学年研究授業の計画
・学習環境の整備
・5年総合に外部講師
・水族館・埋没林博物館で調査研究活動

・自由研究課題の一覧表(クラス毎)
・吉島フェスティバル親子自由研究コーナー設置

11

〇要請訪問研修

11/18 生活科1年

11/26 理科5年

・3学年研究授業11/7

・新聞発行準備

12

〇教材開発研修
 ・12/2 理科4年
〇公開授業の案内状送付
(市内学校・理科大好き関連校)
〇研究要のまとめ作成

・公開授業の準備

 

・研究のまとめ
・ホームページ作成

・新聞発行準備

〇要請訪問研修
1/21総合5
〇公開授業の準備
・指導案作成・送付
(市内学校・理科大好き関連校)

・公開授業(4年理科)
・今年度の研究のまとめ

・研究のまとめ作成

・親子自由研究新聞第2号発行

〇公開授業・協議会2/4
・生活科1年
・理科4年
・総合5年
2/13親子科学教室(5年)
〇第2回アンケート集計
〇年間研究計画の見直し

15年度年間指導計画の見直し

15年度「総合的な学習の時間」年間指導計画の見直し

・親子自由研究発表会

16年度研究計画作成

16年度年間指導計画の作成

16年度「総合的な学習の時間」年間指導計画の作成

・まとめと反省